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[ 感想 ]作曲家 福島諭が語る「CODA」







2017年12月10日14:00~ の回、恵比寿にて『Ryuichi Sakamoto: CODA』を鑑賞しました。
私にとって2017年最大の共感を持って聴いた録楽(CD)は坂本龍一さんのアルバム『async』でした。最初に再生した瞬間から流れ込んできた音の手触り、現在もまだその余韻の中にいるような気もします。音楽環境のこれほど変化した現代でも(こんな年齢になっても)、音(音楽)を通じてこんな印象的なことが精神に起こり得るのか、ということについてはまだとても驚いてもいます。
 ドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』は、2012年から2017年の約5年間に渡り撮影されたといいます。映画の中には過去の記録映像も含まれていますから、印象としてはその5年間以上の時間を扱っているようにも感じます。実質的にはアルバム『async』完成直前までをこの映画は扱っているとも言え、『async』がどのように完成されたかの一端を垣間見ることがでたようにも感じます。映画の中には『async』の中には採用されなかった和音、音の断片なども記録されていて、それがかえって『async』を通過した耳にとっては、このアルバムの濃縮された時間を意識させるものでもありました。また、いくつかの曲の背景にある特別な思いや和音のイメージなどは過去の坂本龍一さんの活動(映画音楽)からの引用であることも示されており、『async』自体が想像以上に広く、自身の過去とのネットワークを持っているものなのだということも感じられました。
 印象的なシーンはいくつかあり、制作途中の曲を聴きながら拍を探るように手でカウントしているシーンでは音だけからは分からない、作曲家がどこを聴いていたのかが伝わってきたりします。「fullmoon」の制作途中の姿、そして何より、音楽に、音自体に真正面から極めて素直に向き合っている音楽家の姿に、確かに私の心は動かされました。『async』に留まっている秘密の一端を想像できるとってもドリーミーな時間でした。

(contribute to a [ Ryuich Sakamoto: CODA を観て、思うこと。] Dec.21,2017)